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2010年12月24日 (金)

【立ち読み】高校生活指導187号② 元祖「困らす生徒」は、いま「困っている生徒」の応援団長②

(つづきです)

 担任まわりが違ったので、直接私は彼を教えてはいない。しかし、彼の“武勇伝”は、他学年の私の耳にもたくさん入っていた。学校じゅうにトイレ用洗剤をまき散らしたり、銀玉鉄砲に正露丸を詰めての銃撃戦で校内を異様なにおいに包んだり、プールに次々と服のまま互いを投げ込みあったり――どれもこれも「当該学年の先生ら、タイヘンやなあ」ばかりだったが、その後、きっちり卒業式では答辞を読み(厳粛ないい卒業式だった)、卒業後は電気工事の親方に師事する。やがて独立して電気設備関連の会社を起業し、今や地元で十数人の従業員を抱える「社長」である。

 この「K高乱入事件」以後、私は彼と親交を深めることになる。
「センセイって仕事、ホントたいへんですね。今になってやっとわかりました。若いヤツ、朝は起きて来んわちょっと怒ったら無断で会社来んようになるわ、よォそんなヤツらいっぱい相手にやったはるわ」
「オマエが言うな」と突っ込みながら、今や若者を「教育」する立場となった彼と杯を交わす。
「でも、オレはK高の先生たちにホントに感謝してます。何度、『もうやめや!』と叫んだか数えられない。それを『短気起こすな。しっかり卒業せい』と毎回諭してくれた担任や学年の先生たち。きっとオレのために他の先生らから文句言われたり、投げ出したくもなったことだろう(その通り!)。けどね、停学重ねながらもなんとか卒業できたことが、いま、どれだけその後の自信になってることか」

「本人の意志がどれだけ堅くても、それはいっときの気の迷いだから、絶対にやめさせないでやってくれ」という彼のもとに、私はその後、何人もの「迷える高校生たち」を連れていった。
「やめて別の道で働く。親のためにもそれがいいんや!」
 興奮する生徒相手に、「オレの連れで学校やめたヤツは、一〇〇%、あのときなんでやめたんやろ、と後悔してる。親のためやなんてエエカッコ言うな。親っちゅうモンはな、息子にはたとえずたずたになってでも学校を続けてほしいと思ってるんや」と、自らの経験を交えながら厳しく重い言葉を吐き続ける。
 しかし、それでも「やめたい」と唱える生徒には、
「よしわかった。やめたあとの仕事先は決まってるんか? 決まるまでウチで働け」
 自分の会社に雇ってくれる。
「中退者のなかには、ものすごいパワーを持つ者もいます。単にその学校に合わなかっただけ」
 昨今の就職難のよのなか、ただでさえ十代の仕事がないうえ「中退」は大きなハンデとなる。そんな若者を、積極的に雇用してくれる地元中小企業経営者――原点は、「当時は何の価値も見いだせず毎日だらだらと通っていた」高校時代にあると彼はいう。

 
(下略。第1特集「「困らす」生徒の指導」。佐藤功『高校生活指導』187号所収)

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