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2011年11月 4日 (金)

スウェーデンの労働者運動をもとに、「教育基本条例案を事実をもとに考える」シンポを振り返る③

  (つづきです)

  最後の③は、シンポジウムで、条例案が「議論を起こした」という肯定面を指摘する声に、「それは意図したことではなかった」「教育に刺激は向かない」という反論があったことが中心にあります。両者共に納得できる意見ですが、このままでは平行線をたどるように思いました。前者の声は、この条例の肯定面として位置づけられるのではなく、教育改革の進め方についての問題提起として位置づけることで生かされるだろうと思います。すなわち、今回のような、法的に穴の多い、慎重さを欠いた、強制的な提案に対して、関係者が正当に意見を表明し議論し意思決定していくというプロセスあるいは文化が、教育改革において用意されるべきではないかという提案です。その中にはもちろん、生徒会を通じた生徒からの意見、調査・研究ベースの提案もあってしかるべきだと思います。それを欠いているために、「料理に突然濃い醤油を入れて後戻りができないような」不安を煽る手法がまかり通るように思います。

  条例案の中身として教育への政治介入が論点になっていますが、ここでの指摘は少し違って、(教育に関わる)立法のプロセスに関する議論です。わたしは政治についてあまりよく分かっていませんが、立法段階に対話の契機が設定されているかどうかが気になります。
 
 スウェーデンの事例を見れば、教育改革の際には必ず特別審議会が設置され、研究調査を基礎に審議を行って改革の提案をし、それに対して関連各団体(生徒会、教員組合、労働市場の各種団体、保護者団体、地方自治体、学校など)の意見を収集する手続きが挟まれます。その意見を引き取って教育省が新たに改革構想を作り、国会に議案を出し、決議が行われます。そして教育改革は数年の試行期間を経て現実との調整を図りながら、本格実施に移されます。昨今の新自由主義化の中で(スウェーデンは北欧一、新自由主義化が進んでいます)、審議会における調査研究の希薄化、試行期間の短期化が指摘されていますが、すべての人が積極的に関わろうとする契機を改革のプロセスに用意するのは、民主的な改革のためでもあり、現実的で成功する改革を行うための戦略でもありました。

 対話の後に、教育現場が自発的に参加して改革を行わない限り、強制では教育改革は実現しないというのがスウェーデンで広く存在している思想です。ポジティブすぎるかもしれませんが、心配と不信を煽る条例案に対抗するために、安心な学校・教育・社会のあり方を具体的に示し、希望を広げていくことが必要だろうと思います。現場でそのための実践を積み重ねていらっしゃる教師の皆さんとは違う立場から、今の段階の自分ができることは、ともかくもアメリカとイギリス以外のオルタナティブを――追随するモデルとしてよりもむしろ自分の状態を照らし返す鏡としてではありますが――示すことなのだろうと思いました。

                          (おわり。H)

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