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2013年10月16日 (水)

【立ち読み】「早蕨」8月・全国大会報告号⑭ 大阪ワンデーウォーク 高校野球の聖地 甲子園球場

(前略)
 
阪神電鉄の「神技」
 
 甲子園とくれば鉄とて注目しないわけにいかないのが観客輸送である。特にナイターが終わった後、帰途につく観客を短時間にさばくのは「神技」とさえ言える。

 甲子園球場の観客のうち電車を利用するのは6割ほど。甲子園の定員は5万弱だから満員の日は3万人ほどを迎え、送り出すことになる。大阪方面と神戸方面の比率は2:1くらい。大阪方面の乗客、ほとんどが梅田との間を行き来する乗客のさばき方がポイントだ。

 阪神電鉄では通常時用のほかに野球開催時用に備えた特別のダイヤを用意している。後者には「陰スジ」と呼ぶ架空の列車運行を示す線が何本も引いてあって、試合の開始、終了時刻、観客数によって、何本もの陰スジから最適なものを選んで運行するのだ。

 試合開始前はそう難しくない。乗客は三々五々やってくるので2時間くらいかけて運べばよい。往復乗車券用の自動券売機を動かし、係員を増やして誘導、普段は通過する直通特急を甲子園に止めたり、梅田駅に置いた輸送本部で乗客の流れを見ながら、若干の臨時特急を運転する。

 問題は試合終了後だ。タイガースが勝った場合、負けた場合、たいへんなのはどっちか!? 勝てばトラキチは六甲颪を何度も歌って騒ぐから帰途につくのは多少分散されるか。大差がついて敗色濃厚なら7回裏にジェット風船を飛ばしたら帰る客もいる。競った試合で負ければ真っ直ぐ帰るから集中するのだろうか……ナイターの後が勝負どころだ。

 試合が始まると、輸送本部は甲子園駅に移される。係員が観客数を問い合わせる。試合中盤には駅長自ら球場に行き、自分の目で観客数や試合状況を見る。終盤になると、駅長は梅田方面ゆきホームに待機、ラジオで試合進行を確認しながら球場からの乗客の流れを観察する。いよいよ観客が帰りだすと、駅ホームから尼崎にある列車運行センターの運転指令に臨時列車運行を要請する。臨時列車用の車両は尼崎、石屋川の両車庫、青木や西宮、御影の各駅などに待機させていて、運転指令からの指示によって順次出発する。

 一方、駅構内では乗客を大阪、神戸方面に分け、改札からホームへの乗客の流れを調節、
ホームに到着した列車の乗車人員に見合う、程よい人数をホームに送り込む。大事なことはホームにきた乗客が止まっている電車に乗れ、その電車が満員になって発車したらすぐ次の電車がホームに入ってくるようにすること。

 こんな仕組みで「神技」は今日も続いている。           

(中村貴彦。「早蕨」8月号。購読申し込みは、左記、「メール送信」へ)

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