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2013年11月 4日 (月)

【立ち読み】「早蕨」10月号④ BOOK案内1 『学力幻想』小玉重夫著 ちくま新書

大阪に住んでいると教育はどうなってしまうのかと本当に心配だ。一番の問題は「政治介入」だけど、それにとどまらない多様な問題を孕んで事態はすすんでいる。学校・教育に対する「役割期待」が生徒、保護者、地域、教師、そして行政によってバラバラであることが要因として大きいと思う。

 その期待の核はやはり「学力」だろう。本書は、社会にある学力への過剰な囚われ(「学力幻想」)を理論的に整理・解明し、学力を私的で個人的な問題ではない、時々の社会的・政治的な文脈の中で位置づけて、統治機構改革と結んだ問題として今日的に再定義している(学力問題の再政治化)。

 この学力の囚われの背景にあるのが、学ぶものの側のみから学力をとらえる「子ども中心主義」と「みんなやればできる」という「ポピュリズム」であると筆者は言う。この「2つの罠」を、ハンナ・アレントやバースティンなどの思想家によりながら批判的に検討し、シティズンシップ(市民性)教育における学力と教師のありよう、教育改革の方向性を論じている。ペタゴジー(教えるということ)とかメリトクラシー(能力主義)など用語のむずかしさはあるが、読み込むうちに見えてくるものは多い。本書の魅力は、教育改革の現状を学力面から解剖しつつ、学力問題を「多様なアイデンティティを承認する複数性の社会」としての福祉国家の再定義につなげているところだと思う。そうした社会は教育でこそ創造することができるだろう。教師は〈「中断のペタゴジー」を生き、教育の再政治化の担い手とならねばならない」〉(197頁)という筆者の提起を受け止めたいと思う。

(首藤広道。「早蕨」10月号。購読申し込みは、左記、「メール送信」へ)

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