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2014年8月20日 (水)

【立ち読み】「早蕨」6月号⑪ 重鎮メンバーも昔は若かった③ 私を変えた生徒たち

 「先生、明日大介を見に来てください。本当にいい顔してますから」
 大介の母親からこんな電話をもらったのは、昨年の秋、9月下旬の夜だった。


 「大介」は2年の時に担任をした生徒。彼は2年に進級した直後から『何のために高校に行くのか』で、ずいぶん悩んでいた。4月下旬から5月上旬にかけて休みが増え、僕は足しげく岸和田にある彼の自宅まで通ったものだった。


 男気が強く、強い自尊心をもつ彼は、髪の毛を染めたり、ピアスをしたり……とはまったく無縁の硬派タイプ。地域の青年団の有力メンバーで、ケンカの強さから、近隣では彼の名を知らぬものはなかった。


 幾度か家を訪ね、彼と話し込むうちに、大介は剛健な外見とは裏腹に、大変ナイーブで優しい心根の持ち主であることがわかってきた。地車(だんじり)を愛し、春木の街を愛し、地元の友人(つれ)友人(つれ)を何よりも大切に考えるかれにとって、「堺市内の大学附属高校」は、あまりにも場違いであったのだ。中学を出てすぐに働き始めた友人たちへの気遣いや焦りを感じているようでもあった。


 「大学へは行かへん。とりあえず、それだけは決めている」と彼は言った。学力的にも、経済的にも、それが十分に果たせる条件にあったため、僕にはそれが、「惜しいこと」のように思われた。だから、当初は「大学に入学してから、ノンビリやりたいことを見つける手もある」などと、“助言”をしていた。一方では、学歴社会の弊害を憂いながら、それを積極的に拒もうとする大介を、そこへ追い込もうとしていたのだった。ほとんどの生徒が進学を希望する本校で、この決意は“異端児”を宣言するものであった。しかし、この決意も含めて、僕自身は、彼と彼の母親からずいぶんたくさんのことを教わったように思う。


 彼の母は「大介のこと、もう少し待ってやってください」と口癖のように話されていた。もとより、彼を“切る”つもりなどなかった僕は、「今彼に一番必要なのは『じっくり考える時間』だと思いますから、待てるだけ待ちます」と、これもまた何度も同じ言葉を口にしていた。


すると彼女は……


(後略。藤田隆介 「早蕨」6月号。購読申し込みは、左記、「メール送信」へ)

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