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2014年9月30日 (火)

全国大会後、私の「後泊」⑥

―「観光客などがよく訪ねてきますか?」



「駅からも離れてますし、不便な所で寂れる一方ですから、あまりお見えになりませ んねえ。観光ルートからも外れています。今年、茨城県で高校生の文化祭(高校総合 文化祭)があって沢山の高校生が見学に来られましたが。研究者の方も来られるので しょうが、名前や身分を明かすことなく去られますねえ。

えっ、大阪からいらしたの ですか?
昔関西で長塚節(ながつかぶし)ってどんな曲や?ってきかれたことがある そうですから、関西では馴染みがないでしょうね、節は。

高校の国語の先生でいらっ しゃるの?それはいいお仕事ですねえ。楽しいでしょう?」


―「節とはどのようなご関係で?」

「私は節の弟の娘です。ええ、節の姪です。節は伯父になります。父は軍人でしたか ら、女はあまり出しゃばるなと厳しく育てられました。


この上空は戦前B29の帰り 道だったんです。東京に焼夷弾を落とした後、B29がこの国生村の上空を帰ってゆ くのです。もう黒い塊のようで怖かったですねえ。土浦には特攻隊の基地もありまし たからねえ」


軍人の娘、というと漱石の『こころ』に出てくるお嬢さんを連想しますが、凛とした 風情で言語明瞭、とてもきれいな東京の山の手のことばを話され、とうていお年を召 した方には思えないほど、しっかりされています。まるで歴史の中に登場する有名な 女性と会っているかのような錯覚に陥りました。世の中に軍人の娘さんなどもう皆無 に近いのだろうけれど、厳しく躾けられてしっかり育たれるのだろうなあとも思いま した。一人でこの節縁の豪農の家を守ってこられたのかと思うと感慨深くなりまし た。


おおよそ約小1時間ほど説明いただいたでしょうか。帰り際には「本当によくお越し 下さいました。嬉しいです」とこちらが恐縮するほどご丁寧な挨拶を頂いた上に、庭 で採れたての見事な苦瓜(ゴーヤ)を6本もお土産に頂きました。所作振る舞いに上 品さが醸し出されていました。


(つづく。札埜和男)

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